やさしく読む歎異抄 第四条 慈悲に聖道・浄土のかはりめあり
「助けたいのに、助けきれない時に」
一言でいうと
人を最後まで助けきることは、自分の力だけではできない。
だから、念仏の道に、終わりのない思いやりがある。
こんな気持ち、ありませんか?
友だちの悩みを聞いて
話は聞けても、何もしてあげられない。
そんな、自分の力のなさを感じたことはありませんか。
第四条は、この世では、どんなにかわいそうだと思っても、思いどおりには助けられない、と言います。
寄付やボランティアをしても
一人を助けても、困っている人は、まだたくさんいる。
第四条は、自分の力で人を最後まで助けきることは、とても難しい、と言います。
家族の看病や介護で
「もっとできたはず」と、自分を責めてしまう時。
第四条は、この世の思いやりには、終わりまで続く道すじがない、と言います。
一つの読み方として、助けきれない自分を、責めすぎなくてよい、とも読めます。
たとえるなら、バケツと雨
かわいた畑に、自分のバケツで水を運ぶ。
一つの畑は潤っても、全部の畑には届きません。
雨は、すべての畑に、同じようにふります。
第四条は、念仏して仏になれば、大きな慈悲の心で、思いどおりに人を助けられる、と言います。
バケツの水が自分の力でする思いやり、雨が仏になってからの大きな慈悲にあたります。
この四つのたとえは、分かりやすくするために作ったものです。お寺や学者の説明ではありません。
原文とやさしい訳
原文 1
慈悲に聖道・浄土のかはりめあり。
やさしい訳: 人を思いやる心(慈悲)には、「聖道」と「浄土」で、違いがあります。
原文 2
聖道の慈悲といふは、ものをあはれみ、かなしみ、はぐゝむなり。
やさしい訳: 聖道の慈悲というのは、人を哀れみ、いとおしく思い、育てることです。
原文 3
しかれども、おもふがごとくたすけとぐること、きはめてありがたし。
やさしい訳: けれども、思いどおりに最後まで助けきることは、とても難しいのです。
原文 4
浄土の慈悲といふは、念仏していそぎ仏になりて、大慈大悲心をもて、おもふがごとく衆生を利益するをいふべきなり。
やさしい訳: 浄土の慈悲というのは、念仏して、急いで仏になり、その大きな慈悲の心で、思いどおりに、すべての人を助けることです。
原文 5
今生に、いかにいとをし不便とおもふとも、存知のごとくたすけがたければ、この慈悲始終なし。
やさしい訳: この世では、どんなにいとおしい、かわいそうだと思っても、思いどおりには助けられません。だから、この慈悲は、最後までやりとおせないのです。
原文 6
しかれば念仏まふすのみぞ、すえとをりたる大慈悲心にてさふらうべきと云々。
やさしい訳: だから、念仏することだけが、最後まで通りぬける、本当の大きな慈悲の心なのです。――と、(親鸞聖人は)おっしゃいました。
⑥の最後の「と云々」は、「と、おっしゃいました」という意味です。歎異抄は、弟子が聞いた親鸞聖人の言葉を書き残したものです。
言葉の意味
- 慈悲
- 仏さまが人を哀れみ、楽しみをあたえて、苦しみを取りのぞくこと。「慈」は楽しみをあたえること、「悲」は苦しみをぬいてあげることです。
- 聖道・浄土
- 聖道(聖道門)は、自分の力で修行して、この世でさとりをめざす教え。浄土(浄土門)は、阿弥陀さまの力で浄土に生まれる教えです。古い訳の注にも、聖道は「自力」、浄土は「他力」とあります。
- 大慈大悲心
- 仏さまの、大きな慈悲の心。
- 今生
- 今の人生。この世。
- 不便
- かわいそうなこと。今の「ふべん(使いにくい)」とは別の意味で、「不憫」とも書きます。
- 始終なし
- 最後までやりとおせないこと。古い訳では「不徹底」と言っています。
- すえとをりたる
- 最後まで通りぬける。古い訳では「真に徹底した」と言っています。
出典
- 原文:蓮如(れんにょ)が書き写した本の第四条。親鸞仏教センター(真宗大谷派)講座資料「『歎異抄』思想の解明」(2025年2月18日・3月18日)に載っている本文と照らし合わせました。「佛」は「仏」に直しました。 shinran-bc.higashihonganji.or.jp(PDF)
- 本派本願寺 編『意訳聖典』(大正12年・1923年)の「歎異鈔」序・四。 ウィキソース
- コトバンク「慈悲」。 kotobank.jp
- コトバンク「聖道門」。 kotobank.jp
- Weblio辞書「他生」(今生・前生の説明)。 weblio.jp
- Weblio辞書「不憫」。 weblio.jp
当コーナーでご紹介している「やさしい訳・たとえ・説明」は、出典をもとに GREEN EARTH HAYAMA が独自の理解に基づいてまとめたものです。宗派や寺院による公式な解釈ではなく、また読み方や解説は宗派・研究者によって異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
本コーナーで扱う原文は、約700年前に記された『歎異抄(たんにしょう)』の蓮如(れんにょ)書写本に基づいています。